岳  ― 山麓棚田の風景 ―


秋分の日 半日程度で労せずに登れる手軽な山をと
佐賀、長崎県境の国見岳を目を指す

国見有料道路の料金所公園付近に
思わぬ 出店と 幾らかの人だかり

9月23日 「クニミ」で『国見の日』と言う事らしい

出店の一群の手前で 私の目を引いたのは
懐かしい オイルの匂いと爆音
『発動機愛好会』の旗竿のもと
少年の日の
秋の田んぼの あの『発動機』が 列をなして爆音を立てている



目の前の手入れされた発動機が
                セピア色の記憶を甦らせる

『ああ〜 昔とおんなじ オイルの匂い・・・』
ここに寄りついて来る人の 合言葉
各人 それぞれのセピア色の発動機が
脳裏で動き出す

1台の発動機の前で足を止めた
四角の冷却水の入れ口
クランクケースカバーに浮彫りされた
『ダイキン』の大きな文字



まぎれもない
我家の田んぼで爆音を轟かせた 発動機
私が エンジニアを目指すきっかけの一つとなった
最初に見た内燃期間

気を良くした持ち主は クランクケースを開けてのサービス

今 目の前に動いている
少年の日の僕の心を虜にした 単純な機構

何故か得した気分・・・




国見岳よりの帰路 『岳』の集落を通る

過日 有田川を挟んで対峙する『腰岳』より見た
棚田の集落である


            傾きかけた 秋の陽射しは

                       棚田の景色に 陰影を付け

                                    実った稲穂を一層鮮やかに照らし出す



棚田の一番美しい 一時

車を止めて

しばし 黄金の風景のなかに我身を置く



棚田の風景が こんなにも 懐かしく感じるのは
遠い昔から
この地で 稲作を行ってきたから・・・

コンバインや田植機はおろか
脱穀機や 発動機や 化学肥料もない 昔
里山を背景に持つ棚田は
人の身の丈にあった
生産効率のいい田んぼだった

そして 棚田の集落は
人が生活しやすい場所だった・・・








機械化と近代化が進んだ今日
棚田は
生産性の悪い田んぼとなった・・・

その棚田で

稲作と同時に 治水や景観の保全が行われている

棚田で生産しているのは
米だけじゃなくて
治水効果や 人の心の癒しの効果等など・・・



誰もいない田んぼの学校で
棚田の美しさを味合いながら
棚田の役割などを考える

お米以外に 公共の利益を生み出す 棚田
棚田の維持にかかる負担は
誰が
負うべきか・・・


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