久木野 愛林館  
熊本県水俣市の棚田の里、旧久木野村に、村おこしの拠点となっている三角屋根の建物『愛林館』がある
ここには久木野の棚田を日本一の棚田と自負し、棚田の里から、村おこしの理念として、自然と人間の共生を 訴え、その事を自らの行動により、広く世間に発信している私が尊敬する、沢畑愛林館館長がいる。

そんな愛林館に、山村学校『働くアウトドア-』に参加するため、2泊3日でやって来た。
炭焼の勉強と、学校林の間伐のお手伝いである。
他にも色々の作業やイベントが計画されているが、働くサラリーマンには2泊3日がいいところ・・・


− その1 −  棚田の風景

7月25日木曜日 朝5時に起きて6時より一人南にひた走る
愛林館までの予定時間は5時間
一人行の経済効率の悪さをを考え 高速は避けたが
植木から八代までは 都市部の通勤時の交通混雑を避けて 高速でバイパスする
水俣市街に入る手前で 国道268号線に入リ 更に県道15号線で久木野へと向かう
川沿いに登って行くと 山間の棚田の奥の集落の中に茶色の三角屋根の愛林館がある



静かな棚田に朝日が当たり
緑の稲の葉が黄金色に輝き出す

薄い朝靄の中の集落は
まだ眠りから目覚めていない
朝食当番の前に 棚田の里を一人歩く

朝一番の光は 暑さを感じさせない




  朝の陽光が冬の田圃に降りた霜の粒を
  虹色に輝かせながら暖めて行く
  そんな風景を 地名から思い描く

     日当野の田圃

  少年の頃に見た故郷の風景・・・







寒川地区の午後の棚田
大事なく通りすぎた 台風11号の吹き戻しにざわめく 木々の葉裏





  台風の日の心のざわめきは
  少年の日と少しも変わらない

    久木野の棚田には
  私達の故郷がいっぱい残っている






















− その2 −  炭焼風景



8月25日 AM10:30
私が炭焼の現場に着いた時 
釜には既に火が付けられていて
作業は 一段落付いた所であった

煙突から出る白い煙を見守るメンバー

ちょっと太目のカサコ地蔵が沢畑館長



オイル缶炭焼の準備をしている 環太平洋浄化300年計画の溝口総裁
今回の炭焼の先生 プロの炭焼屋である



オイル缶炭焼は
2,3時間で簡単に出来る炭焼である


出来あがった炭の素材は
割り箸、マツボックリ、お茶の実、柿の実等


割り箸の炭は
そのまま絵コンテとなる

エンジニアから一転きこりをめざし
横浜からに宮崎の諸塚に
移り住んだ青年の
出来立てのコンテによる絵





木の実の炭はチョットした工芸品である


マツボックリと小さな柿の実
お茶の実はもっと趣のある表情を出していた

オイル缶炭焼は
陶芸のような楽しみも味わえる
是非本格的な炭焼とは別に
自分でやって見たい炭焼である



炭焼場から眺める久木野の山々                      ・

2軒ある民家のそばの木陰に
群れて咲いていたクサギの花




実用釜の煙突に木酢回収用の新考案装置を取り付ける
又 台風9号の接近に備えて 暴風と雨水の対策を行う





翌日釜の炊き口を開け 中の様子を見る


練らしの追い炊きを行い
その後
完全に炊き口と煙突の穴を密閉し
数日かけて 消火 冷却

残念ながら 今回炭出しは見ることが出来ない・・・






− その3 −  間伐作業 


住吉神社の裏山となっている学校林は 25、6年ものの檜林である
間伐すべき檜は 白いビニールの紐が結んである

植林以来殆ど手が入っていないという学校林は
奥に行けば 自生の赤松等が 植林された檜以上に成長している所もあり
ブッシュ化した雑木で目的の木に近づくのも困難な場所もある

そう言った場所ではハゼの木が上へ上へと伸びて
檜や赤松を追い越すほど丈を伸ばしている
(佐賀平野では一昔前まで 蝋を作るために水田の端部等に植えられた
均整のいい こんもりとしたハゼの木を良く見かけたものだが・・・)
ここで見かけるハゼの木は ただ ただ日の光を求めて 上へ上へと伸びている
そんなもやしのようなハゼも 山桜も 赤松も切り倒す

ハゼや赤松を切って 檜を切ると鋸刃の進みが急におちる
檜の木質の緻密さを 掌に感じる抵抗と あふれ出る汗の量で実感する

なんの木にしろ 直径20センチを越す木になると
普段 運動不足の心臓と肺は休憩を要求してくる
一本の木を切り倒し 体が休憩と冷却を要求している時
今回の参加者で 某国営放送関連会社の女性ディレクターがカメラを向けた

汗が噴出す顔で インタビューに答えるのはある種心地よかった
自分が何故ここで木を切っているのか・・・?
今の自分の姿を家族はどう思うか・・・?
将来の自分になにを求めるのか・・・?

私の20分以上に渡る独占インタビューに成功したのは 彼女が最初である
そして多聞それで最後となるだろう
他の参加者へのインタビューも含めて 
機会があれば一度その映像を自分でも見てみたいと思う

鋸と鉈の作業期間はカメラを持ち歩かなかったので
間伐の作業風景は 私のカメラには画像として残っていない
文字だけの間伐風景である







− その4 −  住吉神社


合宿のメンバーの中に KさんとNさんと言うベテランの森林インストラクターがいて
私達は 彼らを 陰でチームキノコと敬意を込めてて呼んだ
チームキノコは キノコ捜しの達人で お昼の休息や作業後の小一時間で カゴいっぱいのキノコを取ってくる
勿論 食用に出来る無毒のキノコであることは彼等が保証してくれる

そんなチームキノコがメインの採取場としていたのが住吉神社であった
二日目の午後の作業が終って愛林館に帰る時 私はチームキノコの車に分乗して帰ることになった
当然の成り行きとして 私は彼等のキノコ採取場に拉致されてしまった



 ところが キノコより先に
 住吉神社の杜の木々が私を呼び止めた

 
  静けさの中に奥行きがあり
  池と木々と苔が
  その空間を周りから隔離している

伝説の時代に迷い込んでしまったかと
思わず振り返って見たくなる
静かな 静かな 杜の風景








  昨夜の台風の接近で境内に落ちた
  コウヨウサンの実

  伝説が言う罪人が登ったという杉の木は
  実はこのコウヨウサン(広葉杉)ではないかと
  一人思いを馳せる


翌早朝 一人でふたたび この杜を訪れる

人気のないこの神社の杜は
一日一人でいても飽くことのない
心が遊べる所

後ろ髪を引かれながらも
朝食当番の役を果たすべく 早々に引き上げる








− その5 −  合宿 


愛林館は基本的に宿泊施設ではない
従って ここでの寝食はまさに合宿である

自炊 雑魚寝は 学生時代 公民館やお寺で行った部活の合宿と同様である
違っているのは参加しているメンバーのバリエーション

地元の女子学生と 関西の有名国立大学女子学生
女子学生に間違えられたことをうれしそうに語る報道関係のOL
千葉県からきた二十代の夢を追う青年
山梨県から来た多くを語らず静かに哲学する青年
横浜から宮崎の山村に移り住んできこりをやろうとする青年
3年連続でこの合宿に参加している中年予備軍の森林インストラクター
炭焼を生業とし 300年に渡る太平洋の浄化計画を企てる中年
チームキノコはベテラン森林インストラクターコンビ
環境問題に詳しい中年過ぎのおじさんとそのお仲間の御婦人達
それに 愛林館のスタッフの大学を出たばかりの女性と スタッフOG

この合宿に参加の目的は各々多少違うが 目指す方向性はそう違わない
初めての出会いだが 合宿による触れ合いは得るものが多い



  チームキノコがとってきたキノコは
  彼等が調理したり
  夕食当番の手に委ねられたり
  色々な形で私達の舌を喜ばせてくれる



  K氏と私の最悪の食事当番コンビには
  愛林館スタッフ緒方さんと
  女子大生が手伝ってくれた

  感謝 感謝!


その日の夕方やって来たNさん夫婦の
手作りの料理のお土産が加わり
夕食はそのまま豪華な懇親会へと・・・





若い人達の自分の信念に基づいた行動と
熱く語る言葉に何処か羨ましさを感じる

また 年を重ねた方々の 言葉には
その人が生きてきた年輪の重さをを感じる

ここでは色んなエネルギーが自己を主張して
そして 新しいエネルギーが芽生える

外で一緒に汗を流した後のくつろぎの時間は
人と人との触れ合いが新鮮で刺激的である


豊な自然と 多様な個性は

合宿の成果を

印象的で実り多い物にしてくれた



  沢畑館長

  沢畑館長の奥さん

  スタッフの緒方さん

  スタッフOGの小原さん

  その他参加者全員に


  アリガトウ・・・







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