や ま  ず み
 山祇神社
  ― ダムに沈む巨木達 ― 


12月21日 熊本県 人吉市で、川辺川ダム建設に関する住民討論会が行われた。
会場は、ダム推進派の会社等の動員や社命で、 早朝五時より並んでいたと言う参加者等に占拠されていた様で、 討論会の内容も、推して知るべしって所・・・。
ダム建設の是非に付いては充分な知識の無い私には明確なコメントはできないが、 このページをダム建設に関する私のメッセージとして残したい。


川辺川ダムの住民討論会が行われた翌々日

福岡と佐賀の県境
五ケ山ダムの建設予定地
ダムができれば
ダムの底に沈んでしまう 小川内地区に
山祇神社を尋ねた

佐賀橋より背振山方面に車で数分走ると
左手 山側に
小さな滝と 鳥居が目に付く






















ここが 山祇神社 



苔生した
石の階段を上り詰めると
正面に社が見える

物静かな素朴な社である




境内で まず目に付くのが三本の杉

県指定の天然記念物

『小川内の杉』である
〈詳しくは左画像をクリック〉













苔生した樹皮の匂いは 私に創造力を与えてくれる

この樹が見つめてきた 歴史・・・

この樹の これからの運命・・・




落ち葉の上に 広葉杉の実を見つけた


 見まわすと そこいら辺に
 幾つも落ちている

 境内の奥に広葉杉の樹を見つけた
 比較的若い樹である

 広葉杉の実は クリスマスリースにいい
 と言う 友人の言葉を思い出し
 娘へのみやげにと 拾い集める

 冬イチゴも と思い
 身を屈めるが イチゴの実は既についていない
 先客は
 森の小鳥達



 何処の神社も
 社の裏手は独特の雰囲気がある

 少年の日に遊んだ
 社の杜









 しめ縄を巻いた メタセコイア

 メタセコイアの実も
 お土産にと拾って帰る













 境内から続く裏山へ入る



 雑木林の獣道を歩くと
 それと分かるスダジイの古木が数本目に付く

 樹の根元に腰を下ろして
 カメラを構える
 見たイメージが
 カメラのフレームに収まり切らない



樹の上の 苔の緑をレンズ越しに覗いていると
10羽近いシジュウカラの群れがやってきた

その樹の苔の中をつついて 飛び回り
次の木に去って行く

目の前を飛び回るシュジュウカラを
カメラで捕らえた

つもりが

飛び交う小鳥の姿は 大ブレ
どう見ても 樹のこぶにしか見えない
1羽 だけ それらしいのが辛うじて判る

小鳥達を間近に見ていると
自分も森の一部になった気分になる

ダムの底に沈み
湖底の一部となって
水の中から樹木達に話しかける

此の頃は 小鳥の代りに 魚達が遊びに来るようになったね
それに下草が 藻類に代ってしまった

長老の三本杉は頭を水の上に出しているのかなぁ・・・

オイ おまえ達 まだ生きているかい・・・
後 誰と誰が生きているの・・・







境内の反対側の林にも大きな樹がある
こちらは 巨木への踏み分け道ができている



かなりの樹齢のアカガシである
巨木は何れも その存在感を『絵』にし難い

カメラを構え アカガシの樹との距離を測っていると
偶然の風向きで
近くの 野焼きの煙りが辺りを包んだ



アカガシは神の宿る樹となる




 山祇神社とその杜の樹木は五ケ山ダムが完成すれば水の底に沈んでしまう。
県が定めた天然記念物の三本杉も、境内の若い広葉杉も、三本杉と同じ位高く成長したメタセコイアも、 シジュウカラが群れ飛ぶスダジイも、神々や物の怪が宿りそうなアカガシも・・・。
そればかりではなく、私も知らないこの流域の貴重な樹木や植物、 そしてこの近辺の集落の生活も全て水の中に沈み、取り戻す事が出来なくなる。
ダムによって得られるものは計算、算定しやすいが、失うものは計算し難いものが多い。
この神社と、ここにある樹木達の価値は、見る人によって異なる。
この水没地には、人によってはもっと大切な風景や思い出が一杯有るのかもしれない。
 失われ行く大切なものを、少しでも秤に懸けられるよう何等かの形で顕在化する事が、 ダム建設の是非を論議する上でも、必要な事ではないかと言う気がする。


ホームページ